弾性ストッキングの下肢静脈瘤への効果とは?使用方法と共に紹介します。
2018.10.17
下肢静脈瘤の圧迫治療では「弾性ストッキング」というものを使用します。
この弾性ストッキングがなぜ下肢静脈瘤に効果を発揮するのか、さらにどのように使用するのかなど、今回はこちらの記事で弾性ストッキングについてご紹介します。
下肢静脈瘤で弾性ストッキングはどのうような効果があるのか
下肢静脈瘤で弾性ストッキングによる圧迫治療を行う病院は非常に多いです。
では、弾性ストッキングにはどのような効果があるのでしょうか?
まず下肢静脈瘤とは、下肢に静脈瘤が出来る血管の病気です。
本来心臓から足に届く血液は役目を終えると、また心臓に戻っていきますが、この血液を心臓が戻すことが出来ず、足に留まってしまうことで起こります。
下肢静脈瘤についてはこちらの記事も参考にして下さいね。
弾性ストッキングには、この筋肉のポンプ作用で血液を押し出すサポートをして、静脈の逆流防止弁の強化をしてくれます。
下肢静脈瘤の軽傷~重症の方まで多くの方が始める治療の一つで、手術後にも行われます。
弾性ストッキングは、上に行くほど圧迫圧が少なくなり、足首の圧迫圧が最も強く、段階的圧迫法という構造になっています。
圧迫圧の割合は、メーカーにもよりますが足関節:下腿:大腿=10:7:4の割合で作られているところが多いです。
ちなみに弾性ストッキングは夜間は血行の循環を悪くする可能性があるので、脱いだほうが良いという指導を受ける事が多いです。
弾性ストッキングには種類あり!長所や短所は?
弾性ストッキングは5種類ありそれぞれに長所や短所があります。
ここではその種類と長所や短所について書いていきます。
①ハイソックスタイプ
ハイソックスは足先から膝下まで覆うソックスです。
長所:履きやすく、履いた時の不快感が少ないので、誰でも手軽に履くことが出来ます。
さらに価格も安いので、洗い替えも用意しやすいです。
弾性ストッキングで一番多いタイプがハイソックスタイプです。
短所:足のふくらはぎの部分は圧迫出来ますが、太ももの大腿部を圧迫出来ません。
②ストッキングタイプ
ストッキングタイプはその名の通り、太ももまであるタイプです。
長所:大腿部もしっかり圧迫でき、履きやすく脱ぎやすいです。
さらに蒸し暑さも少ないので、比較的一年中通して使用することが出来ます。
短所:ずり落ちやすく、ずり下がった部分はくるくると丸くなってしまう事が多いです。
③ベルト付き片足ストッキング
腰回りにベルトが付いていて、片足だけ覆えるようになっています。
長所:ずり落ちにくく、着脱が簡単で蒸れることも少ないです。
短所:大腿骨に食い込みやすく、人によっては擦れて痛みが発生する場合があります。
④パンストタイプ
パンストタイプは、腰回りまで覆うタイプです。
長所:ずり落ちにくく、食い込みにくい、さらにファッション性があるので、一日中通して履くことが出来ます。
短所:着脱が困難で、トイレに行くときに脱がなければならないので面倒くさいです。
さらに蒸し暑く、値段も比較的高めになっています。
⑤片足用パンスト
片足用パンストは、片方の足がつま先から骨盤まで覆われていて、もう片方が、大腿部まで覆うという形です。
長所:ずり落ちにくく、食い込みにくく、蒸し暑さが少ないので簡単に履くことが出来ます。
短所:値段が高く、片足は全部覆われているのに、もう片方は足が出ている状態なので外出時は着用することが出来ません。
つま先ありとなしタイプはどちらがいい?
また、つま先ありかなしの2つのタイプがあります。
つま先なしのほうが、足の指を直接確認することが出来、履きやすい傾向があります。
しかし素足が不快に感じたり、普段も履きたいという場合は、つま先ありタイプのほうがおすすめです。
弾性ストッキングの履き方
弾性ストッキングを初めて履く場合、最初きつくてなかなか履けないという方が多い傾向にあります。
コツを掴めば簡単に履けるので、ここでは履き方を書いておきます。
1.ストッキングに手を入れてかかと部分をつまみます。
2.かかとをもったまま、ストッキングを裏返します。
3.ストッキングの先端に足先を入れて、かかとまで入れる
4.ストッキングを引き上げて装着完了です
弾性ストッキングはかかとを入れるまでが一番手こずります。
ストッキングを裏返してから履くと履きやすいのでぜひ実践してみて下さいね。
下肢静脈瘤の治療目的の圧迫圧は?
下肢静脈瘤の治療目的で弾性ストッキングを使用する場合、ストッキングには圧迫圧というのもがあり、数値が高ければ高いほど圧迫圧も高くなります。
通常の下肢静脈瘤の場合、医師と相談して圧迫圧を決定しますが、大体「20~30㎜Hg」が目安になります。
もちろん症状によってこの圧迫圧も変わるので、医師に指示に従い使用するようにしましょう。
ちなみに市販されている弾性ストッキングの圧迫圧は15㎜Hg以下なので、治療には不十分です。
弾性ストッキングが着用出来ない人がいる
実は弾性ストッキングは履いてはいけない、禁忌の方がいます。
- 動脈血行障害があり、足関節血圧が65㎜Hg、80㎜Hg未満の場合
- ABI(血流検査)が0.7あるいは0.6未満
- 蜂窩織炎や血栓性静脈炎などの急性炎症
- 急性外傷、急性創傷
- うっ血性心不全、糖尿病、深部静脈血栓症の急性期
これらの患者の方が弾性ストッキングを使用すると、合併症を引きこす可能性が高くなるため、弾性ストッキングは使用できません。
ですが、動脈血行障害の場合、検査の結果弾性ストッキングを使用してもいいという判断をする場合もあります。
弾性ストッキングによる合併症
弾性ストッキングの着用により合併症が起こる可能性があります。
先ほど上に書いた、禁忌の方が使用した場合の合併症でもあるのでぜひ読んでみて下さい。
①皮膚トラブル
弾性ストッキングを使用した圧迫療法に起こるのが
- びらん
- かぶれ
- 皮膚発赤
といった皮膚トラブルです。
やはり長時間着用するため、蒸れたり、肌が弱い方はトラブルが起きやすい傾向にあります。
さらにこの肌トラブルが原因で、むくみを派生させたり皮膚損傷が起こりやすくなります。
皮膚トラブルが起こる場合、保湿クリームや、抗ヒスタミン外用薬が処方されます。
②腓骨神経麻痺
腓骨神経麻痺は腓骨頭部が圧迫され、下腿の外から足背などが痺れたり、触った感じが鈍くなります。
とくに痩せている患者に起こりやすく、サイズにあった弾性ストッキングの着用が求められます。
③下肢虚血症状
閉塞性動脈硬化症の中でも、特に重症下肢虚血には弾性ストッキングは禁忌です。
弾性ストッキングの圧迫により、血行障害がおこり、下肢を切断した事例があります。
医師の指導のもと正しく使用することが大切です。
弾性ストッキングの費用は?
弾性ストッキングは市販でも販売されていて価格も安いですが、効果は低いものが多いです。
そのため治療では医療用の弾性ストッキングを使用することになります。
気になる価格ですが、弾性ストッキングは癌の治療後やリンパ浮腫で入院している場合は、保険適応になります。
しかし、下肢静脈瘤の治療での使用は「保険適用外」になってしまうので覚えておきましょう。
価格もメーカーや圧迫圧、タイプによって様々で大体4,000円~20,000円で購入が出来るようです。
まとめ
今回は下肢静脈瘤の治療で使用される弾性ストッキングについて見てきました。
様々な種類と圧迫圧の選択ができ、その人に合ったものを選ぶのが大事という事が分かりましたね。
さらに、弾性ストッキングが使用できない方もいます。
まずは医師の診察をしっかり受け、適切な着用方法で履くことが大切です。
費用は自己負担なので、ある程度の費用の準備もしっかりしておきましょう。