下肢静脈瘤の血管硬化療法とは

2018.07.25

医者 注射

下肢静脈瘤とは、足の静脈がこぶのように膨らんだ状態になる、足の血管の病気です。

下肢静脈瘤は、急速に進行し、生命を脅かすような危険な病気ではありませんが、足のだるさやむくみなどが慢性的に起こるため、日常生活の質を低下させる原因となります。

稀に、湿疹ができたり、皮膚に潰瘍ができて重症化することがあります。

この場合は、できるだけ早く専門の医療機関を受診する必要があります。

下肢静脈瘤の治療

医者
下肢静脈瘤の治療には、「保存的療法」、「硬化療法」、「手術」、「血管内治療」の4つがあります。

現在、最も多く用いられている治療法は、「保存的療法」で、2番目は「硬化療法」です。

ここでは、「硬化療法」について紹介していきます。

血管硬化療法とは

硬化療法は、静脈瘤に硬化剤と言われる薬剤を注射して、血管を固める治療法です。

静脈瘤に硬化剤を注射し、徐々に薬を吸収させ、静脈の内膜に炎症を起こさせます。

その後、皮膚の上から患部を圧迫し、血管を固めて静脈瘤を少しずつ吸収させ消してしまうことを目的に行います。

硬化療法のメリットは、患部の数か所に注射をするだけなので、外来で簡単に行うことが可能です。

デメリットは、色素沈着、薬剤アレルギー、皮膚潰瘍、深部静脈血栓症などのリスクがあることと、ある程度進んだ下肢静脈瘤では、治療効果があまり期待できず、再発が多く起こることです。

軽症の下肢静脈瘤には効果の高い治療法ですが、進行した静脈瘤には、あまり効果が期待できない場合もあります。

しかし、最近では、硬化剤に空気を混ぜて泡状にした薬剤を使用する「フォーム硬化療法」が行われるようになったため、さらに治療できる静脈瘤の範囲が広がり、治療効果も上がりました。

硬化療法のメリット

  • 外来で日帰り治療が可能
  • 1回の施行時間が10~20分と短時間
  • 無麻酔で行え、その日から歩くことが可能
  • 傷跡がほとんど残らない

硬化療法のデメリット

  • 硬化剤注入部に色素沈着を認めることがある
  • しこりや静脈炎を起こすことがある
  • 再発の可能性がある
  • 稀に、血栓症などの合併症を起こすことがある

適応

老女
比較的軽症である「網目状静脈瘤」や「側枝型静脈瘤」、手術後に再発した静脈瘤に効果的と言われています。

治療の際に麻酔が必要ないので、高齢の方心臓疾患の方にも比較的安心して行えます。

治療の実際と治療後の注意点

  • 注射による治療なので、傷もなく、治療後の消毒も必要ありません。

    麻酔の必要もなく、すぐに歩くことができます。

  • 治療後の入浴は翌日から可能となります。

    すぐ普段通りの生活に戻ることができます。

  • 硬化療法で大切なことは、治療した部位の圧迫です。

    硬化剤の注射後は、注入した薬液をしっかり固定させるために、治療後早期からの圧迫が大切になります。

    注射後約1週間から10日間は、弾性ストッキングなどで患部を圧迫します。

    注射後の圧迫が不十分だと、注射部位のしこりが大きくなることがあります。

  • 飲食の制限はありませんが、飲酒の影響で、施術後の痛みが強くなったり、血栓症のリスクが高まったりする可能性があるため、施術当日から3日間は、飲酒を控えるほうが良いでしょう。
  • 治療期間中は、安静にしている必要はなく、特別な運動制限はありません。

    むしろ、適度な運動が大切です。

    長時間の立ち仕事や同一姿勢を続けることは、足の血液循環を滞らせ、静脈瘤の悪化を招く恐れがあるため、適度に歩いたり動いたりして、下肢の血液循環を良くすることが大切です。

治療後の経過

医者

注射した部分に皮下出血が起こることがありますが、通常1~2週間で自然と吸収され目立たなくなります。

5~7日後には、静脈瘤が治療前より盛り上がって大きくなり、痛みを伴ってきますが、これは正常な治療経過です。

硬化療法の治療効果が出てきているという目安でもあるので、心配はいりません。

また、1週間ほどで、注射部位の血管に沿って色素沈着が起こってきます。

シミは長く残り、なかなか消えないことがありますが、半年から1年程度で薄くなり目立たなくなります。

治療後1ヶ月程度で静脈瘤が硬く触れ、圧痛を伴ってきます。

硬くなった静脈は、半年ほどで吸収されて、しこりは消えていきます。

治療によってできたしこりが消えて綺麗になるまでに約1~2年程かかります。

副作用

副作用
これまでに重篤な副作用の報告はありません。

この薬は、食道静脈瘤の治療にも使用されており、治療効果は立証されているため、この治療法の安全性は高いといえます。

副作用があるとすれば、注射した部位から近くの皮膚にシミ、色素沈着がある程度です。

一般的には、皮膚から浅い位置にある血管に注射をするので、全身に大きな副作用は起こりにくいと言えます。

しこり

硬化剤を注入した部分に、しこりができることがあります。

一般に治療後1ヶ月頃にしこりが最も目立ち、その後徐々に小さくなります。

これは異常ではなく、通常は半年から1年で気にならない程度になります。

色素沈着

硬化療法を行った部分の血管が、血管に沿って茶褐色になることがあります。

これを色素沈着といいます。

治療後3ヶ月ほど経過時に最も目立つことが多く、消えるまで1年以上かかることもありますが、痕が残ることはめったにありません。

以下のような症状が起こった場合、血管外科を受診することをお勧めします。

血栓性静脈炎

治療後2~3ヶ月たってから、血栓性静脈炎を起こすことがあります。

これは、固まった静脈瘤が赤く腫れて、痛みを伴います。

いずれ治まりますが、早く治すには、内服薬・塗り薬が有効です。

このような症状が出た場合は、早めに受診しましょう。

皮膚壊死

治療の際、硬化剤が血管の外に漏れると、その後皮膚壊死を起こし、注射した部分が青黒くなったり、強く痛むことがあります。

このような症状が現れた場合には、すぐに受診することをお勧めします。

深部静脈血栓症

ごく稀に、深部にある静脈に血栓が生じ、深部静脈血栓症を起こすことがあります。

これは、血管内に血栓が詰まり、急速に足の血流を滞らせることで起こります。

急に足が腫れて痛みを伴う場合には、深部静脈血栓症の可能性があるので、すぐに受診するようにしましょう。

肺動脈塞栓症

深部静脈血栓症よりも更に稀ですが、肺動脈塞栓症を起こす場合があります。

これは、静脈瘤の中でできた血栓が肺にまで流れ、肺の動脈を詰まらせることで起こります。

硬化療法による治療後、息切れ、呼吸困難、胸痛、血痰などの症状があらわれた場合には、ただちに受診をしましょう。

これは命に関わることもあります。

突然の失神発作で発症することもあります。

まとめ

進行した下肢静脈瘤は、不快な症状を伴い、生活の質を下げる原因となります。

生活の質を低下させず、快適な生活を維持するためにも、静脈瘤の進行を防ぎ、悪化をさせない工夫が大切です。

下肢静脈瘤の治療法にはいろいろありますが、症状を改善し、快適な生活を送るためには、専門の医療機関で十分な診察、説明を受け、ご自分にあった治療方法を見つけましょう。