立ち仕事の人は要注意!下肢静脈瘤とは
2018.07.23
立ち仕事の人が特になりやすいと言われる下肢静脈。その原因と特徴を解説します。
下肢静脈とは
そもそも下肢静脈とはいったい何のことを指すのでしょうか?
静脈の構造
血管には動脈と静脈があります。
心臓から送られた血液は、動脈を通って酸素や栄養分を組織に届けたのち、二酸化炭素や老廃物を回収して、静脈を通って心臓へと戻ります。
その際、足の静脈血は、重力に逆らってのぼっていく必要があります。
そこで、静脈の循環に重要な役割を果たすのが、静脈内の弁とふくらはぎの筋肉です。
静脈内の弁は、八の字型の構造をしており、血液が足の末端の方へ逆流するのを防ぐ働きをしています。
ふくらはぎの筋肉は、ポンプの働きをしており、足の血液を心臓方向へと送り出しています。
これら2つの働きにより、静脈を流れる血液は正常に循環しているのです。
下肢の静脈
足の静脈には、皮膚に近い表面を流れる表在静脈と、筋肉に囲まれた深い部分を流れる深部静脈があり、交通枝と呼ばれる静脈によりつながっています。
表在静脈はたくさんあり、主なものとして、足の付け根から太ももとふくらはぎの内側を経て、内側のくるぶし辺りまで走行する大伏在静脈と、ひざの裏から外側のくるぶし辺りまで走行する小伏在静脈があります。
下肢静脈瘤の原因とは?
下肢静脈瘤になってしまう原因とは何でしょうか?
下肢静脈瘤が起こるメカニズム
静脈弁と筋肉のポンプ作用により、下肢の静脈はスムーズに流れていきますが、弁が壊れたり、機能が弱まったりして正常に機能しなくなる、静脈壁が弱くなるなどの異常が生じると、静脈内で血液が逆流、滞留し、コブ状に膨らみます。
これが静脈瘤です。
静脈瘤は主に表在静脈にできます。
タイプ
下肢静脈瘤は、発現した部位によって4つのタイプに分けられます。
- 最も太い本管(大伏在静脈、小伏在静脈)が拡張した「伏在型静脈瘤」
- 伏在静脈の枝が拡張した「側枝型静脈瘤」
- 径が3mm程度の小静脈が拡張した「網目状静脈瘤」
- 径1mm以下の小静脈が拡張した「蜘蛛の巣状静脈瘤」
徐々に悪化して、静脈のコブが皮膚から大きく盛り上がっていきます。だるさやむくみなどの症状が起こりやすく、重症化すると手術が必要となる場合があります。
青色の血管が見えることが多いと言われています。
赤い血管が蜘蛛の巣のように皮膚に広がって見えます。
検査
静脈瘤の検査は、超音波で行われることが多くなっています。
痛みがないため、身体に負担がなく、直接、静脈の太さ・形や血流状態を調べることが可能となっています。
下肢静脈瘤で見られる症状とは?
下肢静脈瘤は、発症しても命の危険はないものの、慢性的な症状からQOLの低下を引き起こすこともあります。
発現する症状は人により異なり、足の倦怠感や痛み、むくみ、こむら返りなどが出る方もいれば、何も症状が出ない方もいます。
皮膚の色調異常、発疹、皮膚潰瘍なども見られることがあります。
長時間の立ち仕事や同じ体勢でいると症状が悪化する傾向が見られます。
主な症状
- 足の血管が目立つ
- だるさや重さを感じる
- かゆみや痛み
- むくむ
- 足がつる
- ほてりや熱を感じる
- 皮膚の色の変化や湿疹、潰瘍が見られる
下肢静脈瘤になりやすい人の特徴とは?
下肢静脈瘤は40歳以上の女性に多く見られる疾患であり、年齢と共に罹患者は増加していきます。
日本においては、40歳以上の約9%が罹患しており、1000万人以上の患者さんがいると推定されています。
それでは、どのような人が下肢静脈瘤を発症しやすいのでしょうか?
下肢静脈瘤の危険因子
- 高齢者
- 立ち仕事
- 女性
- 家族に下肢静脈瘤の人がいる
- 妊娠、出産歴
- 肥満
- 便秘
加齢によって体力・筋力が衰え、ポンプ機能も弱まっていきます。また、静脈弁の働きが弱くなったり、壊れやすくなります。
ずっと立ったままでいることで血液が滞留しやすく、静脈へ強い負担が掛かりやすくなります。
一般的に筋力が弱く、血液の還流力が弱いため、血液が滞留しやすい傾向があります。
遺伝的な体質によりできやすい、弁が弱いといった下肢静脈瘤になりやすい体質を持っている可能性が高くなります。
下肢静脈への負荷が大きくなることや、妊娠中の黄体ホルモンの分泌により血管が柔らかくなることで下肢静脈瘤のリスクが高くなります。
血行不良により、血液が足に溜まりやすく、静脈への負担が大きくなります。
腸の拡大による静脈の圧迫により、下肢静脈瘤のリスクが高まると言われています。
足の静脈に負荷が掛かる状態が続くと、下肢静脈瘤ができやすくなります。
長時間の立ち仕事は、血液が下肢に滞留しやすく、強い静脈圧が掛かり続けるため、発症・悪化しやすくなります。
予防法や解消法とは?
下肢静脈瘤のリスクが高い方でも、弾性ストッキングの着用や、ふくらはぎのマッサージ、運動・食生活などの生活習慣の見直し等により、血液の循環を良くし、静脈への負担を減らすことで発症を抑えることができる場合があります。
また、一度発症すると自然に治ることはありませんが、マッサージや体操を行うことで症状が軽くなることがあります。
治療法
下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、日々の症状によりQOLが低下している場合や見た目が気になる場合、皮膚炎を起こしている場合などには治療が必要となることがあります。
治療は、弾性ストッキングなどを用いた保存的治療や薬を用いた治療、手術があり、患者さんに合った治療法が選択されます。
下肢静脈瘤は、静脈に負担が掛かることで起きやすくなるため、長時間の立ち仕事をしている方は注意が必要です。
弾性ストッキングの着用やマッサージ、生活習慣の改善により発症リスクを軽減、または症状を改善できることがありますので、日頃から意識し対策を行いましょう。