クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは?
2018.11.13
生まれた時には気がつかなくても、しばらくすると手足の広い範囲に血管腫という良性腫瘍が生じてきたり、その側の手足の長さや太さに異常を認めるような病気が起こることがあります。
もし、そんな症状が認められたなら、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群かもしれません。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、その他にも指の数が多かったり、2本の指がくっついていたりする症状が認められることもあります。
でも、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群なんて病名、聞いたこともないという方も多いことでしょう。
今回の記事では、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群についてご紹介します。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは?
いったい、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とはどのような病気なのでしょう?
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の名前について
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、この疾患に関係した医師の名前から命名された病気です。
すなわち、フランスの神経科医師モーリス・クリッペル(Maurice Klippel)、ポール・トレノネー(Paul Trenaunay)、イギリスの医師フレデリック・パークス・ウェーバー(Frederick Parkes Weber)です。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群はどんな病気?
人間の手足を総じて”四肢”と呼びますが、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は四肢のうちの少なくとも1本に、血管腫という血管に生じる良性腫瘍を認めます。
そして、血管腫が生じた手足の長さや太さが、生じていない側の手足と比べて長くなったり太くなったりします。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群が生じるのは、あくまでも四肢のうちの少なくとも1本ですから、複数の手足に生じてもおかしくありません。
足に生じた場合は、年と共に足の長さに違いが生じるようになるので、歩くのが難しくなることもあります。
現時点では、根本的な治療法は開発されておらず、難病に指定されているのが実情です。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の原因
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群を発症する原因については、今のところ明らかにはなっていません。
この病気の特徴である脈管奇形は、生まれる前から起こっています。
そのため、母親の胎内にいて身体が作られている間に胎児の血管も形成されますが、そのときに生じた異常によって起こっているのではないかと考えられています。
その視点から、原因のひとつとして遺伝子の異常が発見されるようになり、遺伝子治療や異常な遺伝子を標的とした薬の開発が行なわれています。
なお、生まれてから病気がどのように進行していくのかについても、その原因はよくわかっていません。
骨そのものに、生まれる前から異常が生じているのか、脈管奇形を生じたことで骨に異常が起こっているのかも、明確にはなっていないのが現状です。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の頻度
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、男性患者と女性患者を比較しても発症率に差はありません。
病状を発現した当初は、症状が認められないことも珍しくありません。
その一方、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群のうち50%以上は、5歳未満に起こっています。
厚生労働省の行なっている難治性疾患等克服研究事業である『難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究班』によりますと、日本全国でおよそ3,000人の患者がいると推定されています。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の症状
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群では、人の手足の1本、もしくはそれ以上の本数の手足に、広範囲の血管系やリンパ管系の脈管奇形や、手足の長さや太さの異常を認めます。
生まれた時から認められることもあれば、そうでないこともありますが、半数以上の症例で5歳までに症状が現れます。
脈管系奇形
脈管系奇形による症状では、静脈瘤とよばれる静脈がふくれてコブのようになる病気や、血管腫とよばれる良性腫瘍が認められます。
静脈瘤が大きくなると、皮膚に湿疹や潰瘍という傷を生じ、出血を起こすことがあり、細菌感染を生じる原因になります。
手足の症状
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群では、脈管奇形が生じた側の手足の成長が過大となり、長さが長くなったり、太さが太くなったりする手足の肥大が認められます。
足の長さが左右であまりに違いが生じると歩きにくくなるため、社会生活に支障をきたすようになります。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の検査法
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群が疑われる場合、どのような検査が行われるのでしょうか。
理学的検査
理学的検査とは、視診(目で診る診査法)や触診(触れて診る診査法)、聴診(耳で聞て診る診査法)など人間の感覚に頼った検査のことです。
理学的検査では、血管の形や走行に異常が見られるかどうか、拍動に異常がないか、血管に異常な音が流れていないかを調べます。
画像検査
画像検査では、CT検査、 MRI検査、超音波検査、血管造影検査などが行われます。
CT検査では、骨の異常や成長に伴う変化を調べます。
CT検査は、骨などの硬組織に適した検査であり、本来は血管系の検査には向いていません。
もし、脈管奇形の検査でCT検査を行いたい場合は、造影剤という血管系を映し出させる薬剤を使って検査を行います。
MRI検査は、血管系などの軟部組織の検査に適している上に、エックス線を使わないので被曝が起こらないのが利点の検査です。
超音波検査は、人の耳には聞こえない超音波を当てて、その反射をセンサーで読み取る検査法です。
CTやMRIとは違って、リアルタイムの検査ができること、血液の流れ方やその方向がわかることなど、いろいろな利点があります。
これらの検査のうち、いずれにおいても動脈または静脈の形態の異常、拡張した分葉状海綿状あるいは静脈瘤状の静脈性血管腔を有する病変が認められたり、内部に緩徐な血流がみられるのが、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の画像所見上の特徴です。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の治療法
現在のところ、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群に対する根本的な治療法、もしくは効果的な治療法は確立されていません。
病気の症状に応じた対症療法が行なわれています。
脈管奇形
静脈瘤や血管腫といった脈管奇形に対しては、弾性ストッキングを使った圧迫療法や、異常のある血管そのものを取り除く切除術、硬化剤を注入して異常を起こした血管を潰してしまう硬化療法が行われます。
骨の肥大症
手足の長さや太さの異常に対しては、手足の長さを合わせる外科的矯正手術や、細くする減量手術が行われます。
外科的矯正手術とは、短い側の骨を伸ばす骨延長術や長い側の骨の成長を抑える成長抑制術が選ばれています。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の経過
通常、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、患者が成長していくにつれて増大していく傾向にあります。
根本的な治療法が確立されていないので、完全に治癒させることは大変難しいです。
そのため、手足全体にまで病気が拡大すると、社会的生活にも支障をきたすようになります。
皮膚に潰瘍を形成した場合、そこに細菌感染を繰り返すことがありますし、動脈性の出血を認めるようなら、止血が難しく、時に致命的な結果になることもあります。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群について紹介してきました。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、男性・女性問わず発症する病気で、進行すると歩行障害だけでなく、中には心不全などを起こすこともある病気ですが、現状では根本的な治療法は確立されておらず、対症療法となっています。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は難病に指定されている病気でもあり、長い目で対応していかなければならない病気です。
原因がはっきりしていないのですが、症状に応じて、適切に治療を受けるようにしてください。